第45章 前方互換アノード
『まずは最初のポイントです! 走って!』
トーリスの鋭いかけ声。
それを、スタートダッシュを告げる銃声にして、私たちは外に飛び出す。
ディスプレイには、ネオンブルーの点線で道筋が示されていた。
目指すは、ライヴィスたちが築いた拠点(セーフゾーン)だ。
靄の攻撃をよけながら“電波塔”まで一気に全速力で駆け抜ける――それは至難の業だった。
まず、遠い。
そんでもって、手負いのヨンスがいる。
それに、純粋なプログラムのエドはともかく、神経回路を深く繋いでいるらしい(?)私や生身のヨンスでは、体力がもたない。
なので、靄の攻撃をやり過ごすため、いくつかの拠点をライヴィスたちが作ってくれた。
急ごしらえのプログラムなので、短時間しかもたないらしいが。
それでもヨンスが逃げ込んだセーフハウスに準じる防護機能を持つらしい。
『ヨンスさんの最短ルート検索プログラム、本当によくできていますね』
「あったり前なんだぜ! ルートを間違っても、すぐにそこから最短ルートに戻れるんだぜ!」
『すごいです、カーナビじゃないですか』
「ふふん。デコイプログラムの連携は?」
『ばっちり! 演算に時間がかかるけど、なんとか間に合いそう、です……!』
トーリスとヨンスの会話に気を取られていたせいか、私は気づくのが数瞬遅れた。
黒い靄が接近していることに。
「なんのッッ!」
ドンッ! ビリビリッ
という音を響かせて、盛大に靄が後方に吹っ飛ぶ。
今しがた鮮やかな右ストレートを叩き込んだ拳を、満足そうに見る、自称頭脳派、エドァルド・フォンヴォックさん。
頭脳派とは……?
「把握漏れの敵は、僕に任せてください」
『ぜ、全数は無理なんですってぇ~!』
ライヴィスの泣き声を聞きながら、さらに走る。
ディスプレイに黒点として“靄”の位置が映し出されているが、全てを表すのは無理らしい。
『無限湧き状態みたいなんですうぅ』とさっきからずっと泣きのトーンのライヴィス。大丈夫か。