第26章 友達の家の匂いって結構ずっと覚えてる
『もうほんと何なの…』
溢れてしまったため息と共にゆっくりと近づいていく。
銀時「お前ほんと…何なのマジで」
そこには、さっきと同じ壁に顔面からめり込んだ銀さんがいた。
『私も丁度銀さんに対してそう思ってたところよ。奇遇ね』
めり込んだ銀さんを壁から引っこ抜き、そこら辺に捨て置く。
銀時「怪我人が回し蹴りなんてすっかよ普通…いてて」
『あれが1番吹っ飛ぶのよ』
銀時「ストリートファイターやってんじゃねェんだよ!」
蹴られた腰を拳で軽く叩きながら歩く銀さんを睨む。
そんな私の顔を見た銀さんは呆れたようにひらひらと手を振った。
銀時「まぁ全部が全部嘘な訳じゃねェし、ある日ほわっと思い出して地道な調査でじいさんまで辿り着いただけの話だ」
『ふーん?』
畳に寝転び、窓から覗く夜空を見上げた銀さんの隣に座る。
何となく同じように空を見上げてみた。
『…』
満月に少し満たない歪な月を見ていると、この世界に初めて来た日を思い出した。
あの日は、いつになく月が大きく見えたのを覚えている。
『ねぇ銀さん』
銀時「んー」
銀さんは目を瞑ったまま、間の抜けた声で応えた。
『涼しくなってきたね』
銀時「そーだな」
銀色の髪が風に揺れていた。
『いい風だね』
銀時「そーだな…よっと、」
銀さんは少し身じろぐと、体を起こして伸びをした。
『…ねぇ、銀さん』
銀時「…ん?」
ゆっくりと視線が絡み合い、紅色の瞳が私を捉えた。
『…』
久しぶりに真っ直ぐ顔を見れた気がする。
それだけで嬉しかった。
『思い出してくれてありがとう』
銀時「おう」
それだけ言うと銀さんは、小さく笑った。
『?』
銀時「行った先で木登りしてるとは思わなかったけどな」
『…!』
意地の悪い顔をして笑う銀さんを一発殴る。
『それは良いでしょ別に!!』