第25章 川立ちは川で果てる
男のごわついた手が太ももをなぞる。
『…っ』
吐き気がする。
でも、
『いいわ。懸賞金のかかった悪女がどんな味か教えてあげる』
浪士「…威勢がいいねェ」
男は首を鳴らすと、私のブラウスのボタンを一つずつ外していく。
勿体ぶるように、時間をかけて、少しずつ。
『…』
気持ち悪さで涙が出そうになるのを抑え込む。
まだ、もう少し…
浪士「あ"?」
鳩尾のあたりまでボタンが外された時、男は眉を顰めた。
浪士「…大ハズレ」
男はブラウスを大きく開き、品定めするように見まわした。
浪士「顔は良くても傷物たァ、興醒めだわな」
『…警察に追われる女よ?いわく付きに決まってるでしょう?』
浪士「はぁーー…、まぁ、顔が良ければ良しとするか」
男は死んだ目をしながら頭をかいた。
自分の着物を緩めるために体を起こす。
私は、その瞬間を待っていた。
『……っ!』
体を一気に縮め、反動をつけて男の腹部を両足で蹴り飛ばす。
浪士「…う"っ‼︎」
自分より大柄な男も、油断していたため大きく後ろに転がった。
足が自由なままで良かった…!
隙をついて立ち上がり、上体をかがめ地面に向かって思い切り手を振り下ろす。
『…っふ!』
何度か繰り返すうちに、結束バンドが千切れて両手が解放された。
『なめんじゃないわよ!こちとら伊達に女警察やってないっての!』
浪士「て、めェ…!やりやがったな!」
逆上した男はビール箱を投げ飛ばし、刀を抜いて襲いかかる。
浪士達「何の音だ…!!」
激しい音を聞きつけた見張りの浪士達が驚いた様子で加勢する。
『しつこい!家に返せ!!!!!』
近くにあった廃材を使いながら身をかわし、1人ずつ急所を突いてのしていく。
…あと数人、さっさと終わらせてみんなの所に帰ろう。
その時、
浪士「うぁぁぁぁあ!!!!!」
背後から叫び声。
振り向くと短刀を構えた男がすぐ目前に迫っていた。
『あ…』
油断した。
そう思った時、
ヒュンッ…
黒い何かが目の前を横切り、浪士の持つナイフを弾き飛ばした。
『え?』
飛んできたものを見るとそれは見慣れた木刀で、
「オイ、何してんだ…テメェ」
ギリギリと浪士の腕を捻り上げるその影は、私のよく知る男のものだった。