第1章 strategie
ソファの真ん中にカバンを抱えた彼女はちょこんと座っていた。
「ワインとお茶とビールあるけどなんか呑む?俺ワイン呑むけど。」
「あ、じゃあ…同じのでお願いします。」
「おう。赤でいい?」
「なんでも大丈夫です。」
俺は台所のワインに手を伸ばす。
「あ、手伝いますよ!!」
「大丈夫。座ってて。」
「あ、はい…。すみません。」
さっきから冷たい言い方しかできず、彼女はずっと怯えたままだった。
彼女の心を少しも溶かすことができず情けなくて、心が折れる。本当にしょうもない男だ。俺は。
グラスをカチンと交わす。ツマミもない。
食べるものも冷蔵庫に入ってない。
食事に俺から誘っておいて、というか無理やり拉致して、どこに連れていけばいいか分からず、いきなり部屋に連れてきてご飯の一つも出せずに酒飲ますってこれ最低だ。
情けない。
本当に情けない。
もう車に乗ってから一時間以上経つのにまともな会話一つできない。
もう消えてしまいたい。
俺は最低なことにお酒に逃げた。
空きっ腹にグビグビとワインを流し込む。
酔いが回っているのが早いのが分かったが止められなかった。
ふと、前にいる彼女に目を向けると、彼女もお酒を流し込んでいるのが分かった。
顔を真っ赤にさせながら、呑むペースが早かった。
俺は顔を赤らめた彼女に欲情した。
もうどうでも良かった。
グラスを机において、彼女が座っているソファの横に腰掛けた。
彼女はすくめた体がさらにかたくなって緊張しているのが分かった。
怖がっていたのかもしれない。
頬にそっと手をかざす。
びくりと体が反応した。こちらをじーっと見つめていた。
その瞬間スイッチが入った。