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strategie

第1章 strategie



やばい。

この状況絶対やばい。


これただの拉致事件。


「とりあえず新宿まで。」

そういってタクシーは進んでいるが、二人の間に言葉は一切進まない。


どないしよう。

ちらりと横に座る彼女を見ると、体をすくめて目は泳いでいる。


そうだよな。

めっちゃ怖いよな。

その気持ち分かるわ。


俺もこの状況誰かに説明して欲しいくらいやもん。


とりあえずなんか話しかけないと。

「あの…、芝居めっちゃ良かったで。」

「え!いや、全然そんなことないです。」

「……。」

また沈黙。

ダメだ。俺女の人とか本当に慣れてないから何を喋っていいか分からない。
というか怖がってる相手にどう心を開いてもらえばいいか分からない。

いや、いつも仕事でやってるやん。

若い女の子がゲストのときはこっちがバカやって心ひらいて貰って色んな部分を引き出して…。

バカやるってなにすればいいんだ。

いつもやってるのに。

あたまのなかでぐるぐるをものすごいスピードで思考しているのになに一つ言葉が思い浮かばない。

すると、

「…あ、あのー…」

びっくり。彼女が口を開いた。

「…え?」

「あのー、これから…どこに…」

どこ?

どこって、なんにも考えていなかった。
確かに。とりあえず新宿に向かっているが、目的地はどこなのであろうか。
っていうかこういう時どういう店に入れば良いのか。

「#中村#さん、行きたい店ある?」

「いや…、わたしいつも、安い居酒屋とか…ファミレスとかしか…入らないんですよ。そこじゃさすがにまずいですよね…。」

「せやな。」

さすがにまずい。当たり前やろ。女の子と二人で堂本光一が和民で飲んでたら事件や。

「すみません。」

彼女は一ミリも悪くないのに本当に申し訳なさそうな顔で謝った。





「あ、いや…じゃあ、俺ん家で良い?」





彼女はポカンとしていた。





俺は今世界で一番アホかもしれない。




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