第8章 strategie⑧
1206と書かれた紙を頼りにおれは12階に着く。
早く
早く
早く
ヒロカにあってこの腕で抱きしめたい。
彼女の髪の匂いを感じたい
柔らかい肌に包まれたい
そう本能で感じている。
1206の扉の前に立ち、俺は大きく深呼吸をした。
それから呼び鈴のボタンに指を添える。
小さな力しか加えてないのに、ピーンポーンと情けない音が部屋に響いたようだった。
心臓が大きくドクンとなったのが分かった。身体中の血管が動いて勢い良く血が流れている。
するとしばらくしてガチャと扉がゆっくり空いた。
ヒロカがいた。
彼女も俺が来ることを知っていたのか、切ない目をしてこちらを見ていた。
「部屋…入ってええか?」
ヒロカは泣きそうな笑顔を向け、コクリと頷く。