第8章 strategie⑧
林田からホテルの住所が書かれたメモを受け取り、別れた。
不思議な男だ。
林田のヒロカへの愛情は真っ直ぐで純粋なはずなのに、大きく歪んでいた。
俺の愛情とよく似ていた。
しかし俺ら二人が似ているのではない。
ヒロカがそうさせる力を持っているのだ。
ヒロカに深く関わるとどんどん歪んでいっている気がする。
今まで通用していた俺の中の常識が全く通用しなくなる。
しかしその深く堕ちて行く感覚が気持ちいいと感じるのだ。
恐ろしい女だ。
タクシーでホテルの下まで付けて貰い、俺は帽子を深くかぶった。
久しぶりにヒロカに会える。
それだけで遠足の前の子どものように胸が高まった。