第26章 行ってらっしゃいとおかえり
セリシアside
「それで?シンが貴女を呼んだんですか?」
久しぶりに会ったジャーファルは、何も変わっていないようだった。
それが嬉しくて、複雑なのだけどね。
思わず前のように抱き付いてしまったけれど、私は王女だ。
節度が大事なんだった。
「はい。何週間か前にシンドバッドさんから手紙が届いたんです。…まあまさか煌帝国から手紙が届いた時はそれがシンドバッドさんからだなんて思わなかったんで驚きましたよー。」
だから、やっぱり敬語は使わなきゃ。
前と同じじゃダメなんだ。
けじめをつけなきゃ。
「ああ、なるほど…。シンももう帰ってきてますから、後で挨拶に行きましょうか。」
「うん、そうしますね。」
「…でも、何か、貴女を呼ぶような理由…ああ、なるほど。」
言われてなくても心当たりがあるってことか。
さすが王の右腕だなあ。
「私はまだ聞いてないんですよね。手紙には話があるからシンドリアに来て欲しい、としか書いてなかったので。」
「国をあけても大丈夫なのですか?」
「シンドバッドさんの頼みは断れませんし、幸い落ち着いて来てはいたので…あ。」
そうだ、文通も何もしてないからジャーファルに言ってないことがあるんだった。
「どうかしました?」
「ええと…実は、王位継承権を持つ子供が出来まして…。今はまだ私が国のトップですけど…ってあの、ジャーファル?聞いてる?」
一瞬で動きが止まっちゃったけど。