第2章 Opening
[失格]2
「えっ…?桃ちゃん?桃ちゃん!!!」
病室に入ってまず目に飛び込んできたのは、白いベッドに横たわる桃ちゃんの姿
彼女を呼ぶ声と共に私の目からは涙が溢れてきた
隊長が後ろで何かを呟いたが、今の私はそれを聞き取る事ができなかった
「桃ちゃん…、桃ちゃん…」
溢れ出てくる涙をこらえて彼女の手を強く握っても、冷たくなった掌は握り返してはくれない
「さっき、お前は斬魄刀で一突きさせられた奴が一人いたと言ったな。それは雛森だ」
信じたくなかった
あの時、軽い気持ちで聞いていたあの噂が桃ちゃんの事だったなんて…
日番谷隊長の話によれば、慕っていた自分の隊長に騙されて心臓を一突きさせられたらしい
藍染隊長という人で私も少しは知っている
院生の時に見かけた事もあるし、実際に対面もした
彼女の話を聞いても藍染隊長の人物像はとても優しい人で、部下の面倒見がいい人だと言う事が伺えた
「桃ちゃん…ごめんね。この事態に早く気付けなかった。私幼馴染み失格だね」
彼女の頬も掌同様に冷たく、また起きる気配もない
「…目冷める余地はあるのですか」
「それに関してはまだ何も言えない。外傷の怪我の方はその場で卯ノ花隊長が治療してくれたからな。でも問題なのは精神面の方だ。コイツの目が覚めた時が一番心配だがな」
「…そうですか」
「…悪かった…」
「え…?」
とてもか細く小さな声が病室に響いた
何故日番谷隊長が謝るの?
「俺はあの時、雛森の危険に気付いて飛び出した。だが、着いた時には藍染に刺されていた。雛森を守れなくてごめん。俺がもう少し早く気付いていれば雛森はこうはなっていなかった。責めるのなら俺を責めてくれ」
貴方のそんな顔を一体何年ぶりに見ただろうか
それぐらい冬獅郎は悔しそうな悲しそうな顔をしていた
「冬獅郎を責めるとか、そんな事しない。それに誰を責めたって桃ちゃんは起きないし、刺された事実は変わらない。それは藍染隊長を責めたって同じよ」
それを言ったと同時に湧いてくる藍染への憎悪
誰を責めても何も変わらない事実から私の胸は苦しくなった
貴方もそうでしょ?
冬獅郎