第1章 偽りの敬礼
雨が降り始めた。
事切れた私の指先から、力が抜ける。
その拍子に、懐から固く結ばれた一枚の布が地面に落ちた。
自由の翼ではない。
白地に九つの角を持つ星が描かれた、エルディア人の証。
泥にまみれ、血に汚れたそれは、彼女が壁の外で何と呼ばれ、何を背負わされていたのかを無言で物語っていた。
リヴァイは、それを震える手で拾い上げた。
今まで彼女を「同じ泥の中で育った仲間」だと思い、慈しんできた。
だがその手にあるのは、自分たちが「悪魔」と蔑まれ、彼女自身が「差別」の中にいた証拠だった。
「……嘘つきが」
絞り出すような呟き。
彼女を騙していたマーレへの怒りなのか、最後まで真実を言わせられなかった自分への悔恨なのか。
リヴァイは冷たくなった私の額に一度だけ自分の額を合わせると、形見となったその腕章を握りしめ、巨人の群れが蠢く戦場へと戻っていった。
その背中は、以前よりもずっと孤独で、触れるものすべてを切り裂くような鋭い殺気に満ちていた。