第5章 君だけ
憂太の学ランを着せられ、自分の部屋に向かう。
前には憂太の黒髪が揺れている。
"絶対に胸を張るな"と言われてしまった。
歩く度に――擦れる。
今まで自分で胸はほとんど弄っていなかったので、昨日触られて、気持ちいいところなんだと、覚えてしまったようだ。
ぎゅっと腕を組んだ。
「乙骨先輩。千景、どうしたんですか?」
憂太の前を見ると、恵がいた。
「朝だからか、少し肌寒いみたいでね」
飄々と答えている。
憂太と恵が話しているのを、襟に顔を埋めながら聞いていた。
――憂太の匂いがする。
気づいたら私は足を進め、目の前の憂太の背中に額を寄せていた。
少しピクッと動いた憂太は何も言わず、恵に「またね」と行って歩き出した。
手を握られて、咄嗟に追いかけていく。
廊下を曲がり、恵の姿が見えなくなると、壁に背中を押し付けられた。
「あまり可愛いことしないで。伏黒くんの前で、触れたくなっちゃったじゃん」
「ごめん……憂太の匂いに包まれてたら、憂太に触りたくなった……」
憂太は息を呑み、私の顔を自身の肩に押し付けるように抱き締める。
「これで、どっちも出来るよ」
「うん」
憂太の服にしがみついて、温度を感じていた。