第5章 君だけ
心臓の音がうるさい。
答えを求めて言ったわけではないのに、憂太がなんて答えるのか、怖くて聞きたくない。
離れようとしても、憂太の手がずっと頭を押さえている。
抱き締めるように……。
「そ、そっか……狗巻くんと何かあるのかなって思ってたけど……そっか……うん」
憂太の声は、震えていた。
私の髪を揺らす息すらも、震えているよう。
何も言わないの?
"好き"って言ったんだよ?
お互い喋ることなく、教室からみんなの声が聞こえていた。
頭を押さえていた手は震えながら、確かめるように肩を滑っていく。
そのままぎゅっと抱き締められた。
「……ごめん。まだ待って。……って、今のは告白じゃなかったのかな……違う?」
「……違う。だから、振らないで」
"待って"ってなに?
振られたくなくて、告白をなかったことにした。
あんなのを、告白にしたくない。
決意したけど、もう出来なくなってしまった。
「わかった。でも……他の人と仲良くされると、僕……嫉妬しちゃうから」
「え?」
顔を上げて、どういう意味か聞き返すそうとしたが、肩にあった手に口を塞がれた。
どうしたのかと思い、憂太を見つめながら、軽く首を傾げる。
憂太は眉を下げて、困ったような表情をする。
そして、クスッと笑った。
「千景は告白しないでね。だから待ってて」
口を押さえた自身の手に口付けて、唇は上に移動する。
額に触れた唇は震えていた。