第5章 君だけ
授業が終わり、憂太の後を追う。
気づかれていることは知っていた。
それでも憂太は振り返ることなく、気づかないフリを続けている。
少し肩が震えているので、笑っているのかもしれない。
そっと、白い学ランの裾を掴んだ。
「わっ!……ふふ。千景、どうしたの?」
わざとらしく驚き、優しく笑いかけてくれる。
もし、好きだと言ったら、憂太はどうするのだろう。
今のような距離ではなくなるのだろうか。
――離れていく……?
「憂太……夜、部屋に行ってもいい……?」
「……少しだけならいいよ」
憂太は少し迷って頷いてくれた。
嬉しくて、肩に額を寄せてしまった。
憂太は優しく髪を撫でて、そのまま頭を手の平で押さえるように包み込む。
「……狗巻くんと、なに話してたの?」
いつのことかわからず聞き返すと、朝練の時のようだ。
あの話なんて、出来るはずない。
いや――本当は夜言おうと思っていたが、少し早くなるだけ。
「……"私が憂太を好き"って話……」
髪に触れている指が、少し震えた。