第4章 目覚める欲
目が覚めると目の前の乙骨くんは、いつもよりも幼い顔で眠っていた。
憎たらしいほど愛しい顔を見つめたまま、誰も知らない唇を、鼻の先に近づける。
――憂太、無防備だよ。
軽く触れた唇を離し、恥ずかしくなって、布団の中に潜った。
起きてなければいいけど……。
恐る恐る目線を上げ、憂太の顔を見る。
少しの間見つめていても、目を開けることもしなければ、表情を動かすこともしなかった。
「………好き」
内に秘めて置くことすら出来なくなって、溢れ出す。
憂太は誰を見ているの?
しばらく彼の寝顔を見つめていると、ゆっくりと瞼が上がる。
布団から顔を出して、微笑んだ。
「おはよ」
「あ、一色さん……?ん?……あー。おはよう」
憂太はやっと、今の状況を理解したようだ。
呼び方、戻しちゃったのかな……寂しいな。
起き上がって、憂太を見下ろした。
夜の私を思い出して。自分を思い出して。
あの時の私たちは、結構いい雰囲気だったと思う。
「千景?どうしたの?」
恋人なら……ここで、キスも出来たのかな。
「憂太……ゆっくりしていいよ」
零しそうになる言葉をグッと押さえて、時計を見上げた。
9時……部屋に憂太がいなければ騒がしくなるだろう。
それまで、ゆっくりしていたらいい。