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呪いのなかで、恋々【乙骨憂太】

第16章 温もりは海を越えて


その時、私のポケットから着信音が鳴る。
掴まれた手はまだ解放されない。
恐怖は増していく。

「離して。電話に出たいんだけど……」

「俺とおるやろ。無視しぃや」

掴む手は力を増していく。
目を伏せて、少し深呼吸をした。
まだスマホは鳴っている。

素早く影を伸ばし、直哉の影を掴んだ。
直哉の片手が大きく後ろに引かれる。
掴んでいる手が一瞬弱まり、一気に引いて距離を取る。

そのまま高専から離れていき、走りながら電話に出た。

「あ、千景?忙しかった?後にする?」

「憂太ッ……ううん、今がいい。大好き。私は憂太と結婚するの。……憂太ぁ」

誰からか確認をせずに出たが、憂太で安心する。
速くなった鼓動が、少しずつ落ち着いていった。

走りながら話しているからか、どんどん息が上がっていく。
憂太は心配してくれたが、"特訓中"だと嘘をついた。

だけど、その嘘は憂太には通用しない。

「嘘。どうしたの?声、震えてる。何かあった?」

優しい憂太の声色に喉に何かが込み上げてくる。
熱くなった目頭から、涙が溢れ出した。

「直哉がッ……直哉が、会いに来て……怖くてッ……憂太ぁ……」

「ッ!……今は?まだ近くにいる?……すぐに行けたらいいんだけど……指輪はしてる?」

憂太に答えながら、声は嗚咽に塗れていく。
ずっと怖くて固まっていた。
でもそれが憂太に解されて、安心して涙が止まらない。

高専の近くはあまり人が通らない。
それをいいことに、涙を止めようとはしなかった。

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