第3章 春の痛み
「乙骨くーん!あのね!」
学校が終わり、乙骨くんの部屋に来て、同級生たちのことを話そうとした。
「おかえり。楽しかったの?」
「あ、うん……ただいま。楽しかったよ」
でも、乙骨くんが知らない話をされても嫌だろうし、どうせ会うことになるから、すぐに話を切り替える。
「乙骨くんは?なにしてたの?」
少し考える素振りをして、「なにも?」と笑った。
特にすることがなかったのだろう。
手続きの方は既に提出済みで、待っている状態。
乙骨くんが嫌ではなければ、こうやって話し相手になりたい。
悟がたまに来るだろうけど、あの人は忙しいから……。
ベッドに座る乙骨くんを、床に座って見上げた。
――乙骨くんって、こんなかっこよかったっけ?
途端に恥ずかしくなり、ゆっくりと視線を外しながら俯く。
目がキリッとしたわけでもない。
ぎこちなかった笑顔が、自然になったわけでもない。
髪型だって変わっていない。
それなのに……
「かっこいいな……」
「え?一色さん、どうしたの?」
俯いて呟いた言葉は、乙骨くんの耳には届いていなかった。
視線の先の乙骨くんの足の指先が、ぴょこぴょこと動いている。
無意識……癖なのかもしれない。
かっこよく見えるのは――私の中の彼が、そういう存在になったからだ。