第3章 春の痛み
「ずっとここにいたの?」
2人でベッドに座って、微妙な空気のまま話し始める。
だけど……なんだか、その空気が心地よかった。
私が頷くと、沈黙が流れる。
時計の針が、カチッ、カチッと時を刻む音だけが、空気を震わせていた。
私があんなことをしてまったから、気まずい……。
「あ、あの……!乙骨くんに憑いてるのって……」
「一色さん、視えるの?」
また頷くと乙骨くんは、「そっか」と零した。
乙骨くんに憑いているアレは祈本里香という、彼の元婚約者だそうだ。
婚約者と言っても、子供の頃の口約束らしいけど。
その祈本里香が亡くなり、特級過呪怨霊となった。
乙骨くんは、彼女に呪われている。
私は"元婚約者"という言葉に、少し反応した。
胸の奥がチクッと針を刺されたような感覚。
なんとなく……なんとなく、そんな感覚がした。
「乙骨くんは今も……その子のこと、好き……?」
「え?好きなのは好きだけど……今はそういうのじゃ……どうしてそんなこと聞くの?」
何故か安心した。
でも、自分でもよくわからなくて、慌てて謝る。
春の日差しが、ゆっくりと西に沈んでいった。