第3章 春の痛み
乙骨くんと私は、特に仲が良かったわけではなかった。
ただの同級生……とまでは言わないけど、たまに話をするだけの関係。
「……一色さん?」
「そうだよ、乙骨くん!……よかった」
ゆっくりとこちらに視線を戻した乙骨くんと、目が合う。
少し痩せたように見えるが、元気そうだった。
すぐに乙骨くんに駆け寄り、軽く腕を掴む。
あんな風に会えなくなってしまったし、悟に聞いても進展はないし……ずっと不安だった。
目の下の隈が濃くなったようで、以前よりも心配になってしまう。
無意識にその隈を撫でていた。
「っ……あの……」
息を呑む乙骨くんには気づいておらず、そのまま撫で続ける。
淡く染まっていく頬に気づき、私も顔が熱くなって、すぐに離れる。
「もしかして……2人、付き合ってる?」
「え?あ、いや……そういうんじゃないですけど……」
そういえば私、あれからずっと……乙骨くんのことを考えていた。
私の中の乙骨くんの存在が、どんどん膨れ上がった。
「そ?じゃあ僕行くね〜」
悟は背中を向け、ヒラヒラと長い腕を振りながらいなくなった。