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約束の行方【御幸一也】長編

第7章 約束の結末


御幸side

俺の心配をよそに静かに寝息をたてるユキ。

「寝た……のか」

つい、話しすぎちまった。

俺はユキを静かに抱き上げた。

その体は思ったよりも軽かった。

「ちゃんと食ってんのかよ……」

小さくぼやきながら、
ベッドまで運んで静かに寝かせた。

布団をかけてから、額に手を当てる。

「さっきよりマシか」

熱が下がったのを確認するだけ――

だったはずの手を俺は離すことが出来なかった。

「……無防備すぎんだよ」

あまりにも綺麗な寝顔に
気がついたら本音が零れていた。

ふと、視線がユキの唇へ向かった。

――先に奪われちまった。

一瞬で浮かんだその事実に
胸の奥がざわついた。

嫉妬なのか、悔しさなのか。
自分でも分からない黒い感情が腹の中を渦巻いた。

「……っ、ダッサ、俺」

小さく息を吐くと、自嘲気味に呟いた。

俺の手は自然とユキの頬を滑り、
その顔に引き寄せられた。

あと数ミリで唇に触れる――

ハッと思い浮かんだのは、
背中越しに感じたユキの涙だった。

「……っち」

俺は舌打ちをして、視線で空を泳ぐ。

……これじゃ俺も鳴と変わらねぇじゃねぇか。

けど――

ゆっくりユキに視線を戻して、
指先で軽く前髪を掻き分ける。

一瞬だけ迷う。

それでも――

ほんの一瞬。
触れるだけのキスを額に落とした。

「……今はこれで我慢しておいてやる」

誰に言ってるのかも分からないまま
小さく吐き出した。

ゆっくり体を起こすと、
もう一度だけその寝顔を見た。

「……ちゃんと治せよ」

聞こえるはずのない声でそう言って、
静かに部屋を後にした。


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