第7章 約束の結末
――ピタ
……あれ?
身構えていた場所とは違う所に感触があった。
「……やっぱりな」
その声に目を開けると
至近距離に御幸の顔があって、
触れていたのはお互いの額だった。
「また熱上がって来てんじゃねぇかよ」
そう言いながら
御幸は顔を離した。
「え……」
状況を飲み込めずに御幸を見上げたままの私に
御幸の手が近づく
次の瞬間――
パチンッ!
「……った!」
乾いた音と共におでこに衝撃があった。
「……なに期待してんだよ、ばーか」
そう言った御幸は
いつものイタズラっぽい顔を浮かべていた。
「ば、バカはそっちでしょ!」
反射的に言い返した。
しかし――
さっきまでの距離が抜けない体は
火照ったままだった。
「その顔、他の奴に見せんなよ」
「え……」
思わず顔を上げると視線がぶつかる。
さっきまでの冗談っぽさもない。
まっすぐで、どこか余裕のない――
見たことのない御幸の顔。
「……なんで」
私が小さく問うと、
御幸は一瞬言葉に詰まって視線を逸らした。
「……ただ、ムカつくだけだ」
ぶっきらぼうに落とされた言葉。
でも、
御幸の耳の先は少し赤くなっていた。
「……なにそれ」
思わず小さく笑ってしまう。
「笑うなよ」
照れ臭さを隠せていない声でそう言った。
「いいから、もう座ってろよ……」
そう言って御幸は再びコンロの火をつけた。
そこからは他愛もない話が続いた。
休んでる間の試合の話や授業の話。
御幸の作ってくれたお粥を食べて薬を飲んでも話は尽きなかった。
「……だから、沢村のセンスには本当に驚かされてばっかりなんだよ」
「……うん…そうだね」
楽しそうに話す御幸の声が徐々に遠く感じる
「ユキ?大丈夫か?」
その声を最後に意識は途切れた。