第7章 約束の結末
御幸side
――「お前、それキャプテンが言う事ちゃうぞ!」
ゾノに言われた言葉が脳内をこだまする。
……キャプテンなんてやっぱり性に合わねぇんだよ。
渡辺もここまで一緒に練習して来た仲間だ。
本音を言えば
――やめて欲しくない。
でも、それを押し付けたところで
本人の意思が固ければ意味がねぇ。
「……めんどくせぇ」
俺は小さく吐いた。
夢主side
スタッフルームでレギュラー陣と1冊のノートに目を通していた。
「えっ、めっちゃいいじゃん……!」
私は、つい大きな声が出た。
そこには御幸が
渡辺くんを偵察に行かせた理由が詰まっていた。
「前原の捕手目線のノートにナベの野手目線のノート……」
「両方揃えば、かなり見えてくるものあるな」
「マジで使えるぞ、これ!」
「期待以上だよ、ナベ!ありがとな」
口々に評価が飛ぶ中で
「俺にできるのはこれくらいだから……」
渡辺くんは、少しだけ視線を逸らした。
その言葉に――
「それで十分だろ」
御幸は間を置かずに返した。
「絶対、無駄にはしねぇよ」
その声はいつもより少しだけ強かった。
ほんの少しだけ上がった渡辺くんの顔には
もう、迷いはなかった。
……私も負けてられない。
ノートとミットを持って沢村くんの所へ向かう。
今私にできる事をやるために。
パンッ――
乾いた音とともにミットにボールが収まる
「ナイスピッチ!」
「どうでした!?」
「だいぶ球も落ち着いてきたね!」
初戦の日が近づくにつれて活き活きとし始める沢村くんの球。
前まで感じていた嫌な感じも少しずつ取れてきたし、
もしかしたら……
「沢村くん、もしかして何かやりたい事ある?」
「はっ!もしや気付きましたか!?!」
沢村くんはそう言うと
自信げに語り始めた。
「今のアウトローを釣り玉に逆のコースに投げ込めたら
バッターも手を出しかねないのではと!」
私は言葉が出てこなかった。
アウトローの逆側……つまりインコース。
本人は無意識だ。
今、気が付かせてはいけない。
――これは、御幸も驚くだろうな……
「そう、だね!沢村くんが納得いくまで付き合うよ」
……絶対チームに必要な力に変わる。
私は、そう確信した。