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約束の行方【御幸一也】長編

第6章 約束の行方


ごめん……
そう謝ろうと口を開きかけた時、
ユキは一息ついてから再び座った。

「よし!もう1回」
そう言って構えたユキの目はまだ、折れてなかった

なんで……取れてないのに……

俺は思わず息を飲んだ。
真剣に俺の球を受けようとしてるのが全身に伝わった。

「鳴、次からはちゃんと投げて。じゃないと約束果たせないでしょ」
「……」

一瞬、言葉に詰まった。

「私も、ちゃんと取るから」

なにそれ。
自分でも全然だって言ってたのに。

でも――いいじゃん。

俺はボールを少し握り直すとセットポジションに入った。

「……行くぞ」
放たれたボールは、さっきまでとも、今までとも明らかに違った。

早く、鋭く、なにより重たい――
そんな音がした。

「っ……!ったー!」
少し苦しそうな声を出したユキ。
ミットの芯からはズレていたが、しっかりそこにボールはおさまっていた。

一瞬、時が止まった気がした。

……取った
さっきまでのぎこちなさが嘘にすら思えた。

逃げると思った。
でも、あいつは取りに来た。

「ははっ……」

気づけば、笑っていた。

「やるじゃん、ユキ」
「いやぁ、なんとかって感じだったよ……まだ手ヒリヒリするし」
そう言いながらも、目は逸らせなかった。

胸の奥で、何かが変わる音がした。
俺はずっと昔のあいつになにかある気がしてた。
でもちがった。
俺がずっと探していたのは、あの頃のユキじゃない。

今のこいつだ

「ねぇ、もう1回!早く座って!」
「う、うん!」

そこから時間いっぱいまで
俺はあいつのミットに投げ込んだ――


夢主side

途中から鳴の球が変わった。
立ち上がりが少し遅めなのは昔と変わってなかったみたい。

後半になるにつれて、鳴の球の重さや癖にも慣れてきた。
基本バカみたいに真っ直ぐで重たい。でも自分に対するストイックさ、鋭さも兼ね備えてる。
鳴がどれだけ努力してきたのか凄くわかる球ばかりだった。

そして、気が付いたら帰る時間になっていた。
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