第5章 約束を乱すもの
別に未練があるとかじゃない。
ただまだ野球をやってるなら、あの日結局できなかった“約束”を果たしたいだけ。
青道との練習試合の日
降谷とかいう1年ピッチャーと――
例のマネージャーの姿を探した。
ちょうどよく目の前から青道のユニフォームを着たやつが来たから聞いた。
「なぁ、降谷っていう1年ピッチャーどこにいるか知ってる?」
「降谷は……」
沢村が何か言いかけたその時、後ろから歩いてくる人影に目が行った。
一也と並んで歩いてる、その姿。
その人から、目が離せなかった。
やっぱり——
見間違うわけがない。
「見つけた」
「……?おい聞いてんのかよ」
「悪りい、野暮用」
そう言って、もう体は動いていた。
夢主side
「今日は稲実との練習試合かー」
「あぁ。去年の借りもあるし、あそこには……」
昨日から連続して組まれた練習試合。
1年ピッチャーの2人ともキャラが濃くてとてもリードしがいのある子たちだなって感じた。
御幸はめんどくさいらしいけど、内心楽しんでそう。
そんな事を思いながら御幸とグラウンドへ向かっている時だった。
白いユニフォームを着た選手がこちらに向かってきた。
「やっと見つけた!!今日こそ俺の球受けてよ!」
すごい勢いで話しかけられて、一瞬思考が止まった。
「え?一体なんの事ですか…?」
「はぁ?忘れたの!?俺の球受けてくれるって約束!」
球を受ける?
約束——?
どこかで聞いたような気がするのに、うまく思い出せずにいたら、同じ白のユニフォームを着た大柄の選手もこっちへ来た
「おい、成宮。他所のマネージャー困らせるんじゃねえよ」
「違うんだよ雅さんー!知り合いなの!!」
成宮、そう呼ばれた彼の顔をもう一度見た。
その瞬間、ふっと昔の光景がよぎった。
「俺の球、受けて欲しくなった」
そう言って帰り支度中の私と御幸の前に現れた子がいた
でも、あれは……
「ちょっと待って、鳴ちゃんって……男の子だったの?」
「は?そこから!?」
「くっ……は、っはは……っ」
鳴ちゃん、改め成宮くんのツッコミが入ると、
息を潜めてたと思っていた御幸がとうとう吹き出した――
はずだった。