第4章 パラサイト その1
アリスがシャワーを浴びている間に、中也は太宰の執務室の机に茶菓子とサンドウィッチといった軽食を並べていた。
そんな様子をボーッとした顔で眺める太宰。
「食べ物まで用意してるなんて、中也、優しすぎない?」
「五月蠅ェな。手前が丁寧に饗せッつったんだろーが」
文句云いつつも、セッティングの手を止めない中也。
それを見守りつつ、サンドウィッチを摘み食いする太宰に怒りつつも中也が用意したもの凡てを並べ終わった頃、アリスが戻ってきたのだった。
「ふぅーサッパリした!有難うお兄ちゃん」
「どういたしまして」
「わー!美味しそう!これ、食べていい?」
「ああ、好きなだけ食え。丸2日も寝てたんだ。腹減ってンだろ」
「うん!」
ニコニコしながらサンドウィッチを手に取り頬張り始めたアリスに、一足先に食べ終わった太宰が口を開いた。
「約束の日数まで、一日しかないけど?」
「ほへはへははほひははふよ」
ムグムグと口を動かしながら、喋るアリス。
「……間に合う心算なの?ずっと今まで寝てただけなのに」
「はいひょーふ」
「ふーん。それならいいけど」
「否、何で会話出来てンだよ」
何事もなく会話できてる太宰とアリスに呆れた顔をする中也。
ごっくん、と飲み込んで紅茶を啜るアリスに、太宰は続けた。
「そういえば、私の異能力『人間失格』は、異能力を無効化にする能力だ。例外はない」
アリスは黙って聞いている。
「如何して能力が発動出来たんだい?」
初対面で異能を聞き出そうとした事もあったが、アリスは能力について詳しく話はしなかった。
「………。」
無理矢理に聞き出そうとした結果がこの警戒だ。
やれやれ。流石に遣り過ぎたか。
太宰は溜め息を1つ着いた。元より、駄目元で訊いてみただけで返答を得られるとは思っていなかった。
それよりも今は、裏切り者の炙り出しの方が先決だ。
既に判っている『嘘を見抜く能力』さえ有れば直ぐに片が付くのだろう―――。
そんな考えが太宰の脳内を巡る中、アリスの声が思考を停止させた。
「私の異能力は『在るのに無いもの、無いのに在るもの』を自在に操る力だよ。」
「「………は?」」
思いがけない返答に、太宰と中也の声が重なった。