第2章 夢主
首を横に振った私に、太宰は小さく息を吐いた。
「そんなに中也が大事かい?」
「!?」
突然出てきた名前に少し驚く。
でもーーー
「えっ…、中也兄は別に何も関係ないけどっ…」
「そう?」
ジトッとした眼で見られても、何も無い…と思う。
だって、中也兄ならきっとーーー
「そ、それよりも治兄が困るんでしょ?私が情報屋だから」
「チッ…バレたか」
ハア、と態とらしく息を吐く治兄。
「アリスがポートマフィアに所属さえしていなければねぇ」
「でも私、森さんと自由にしていいよって云うお約束でポートマフィアに居るだけだから、治兄のことに首突っ込まない事だって出来るし」
「そうしてくれる心算かい?」
「正直に云うなら、二人の争いには巻き込まれたくない」
「アリスは聡明だねぇ」
頭をよしよしと撫でてくれる治兄。
……少しは元気出たみたい。
「でも、いきなり陽の当たるところ行って大丈夫なの??」
「もう約束は取り付けていてね。私は暫く地下に潜るよ」
「……成程。異能特務課か」
肯定はしなかったけど否定もしない治兄はニッコリと笑った。
「じゃあ暫くは会えないね」
「うふふ。社会に出てからも会ってくれるのかい?」
「それは此方の台詞だよ」
その時、私の通信端末が震えだした。
「時間のようだね」
「そうだね」
着信相手を見て、治兄はすくっと立ち上がった。
「何処かに送ってあげようか?」
「否、いいよ。帽子置き場が此処に来るまでには立ち去れる」
「そっか」
「またね、アリス」
「うん、元気でね治兄」
笑顔でお別れを云うと、治兄は部屋から出ていった。
勧誘は『嘘』ではなかったけどーーー
治兄が私の前に現れた理由は唯一つ。
居場所の特定をさせないための取引……
私の犯した罪を把握しているといういわば脅しに来ただけ。
「治兄には首を絞められたことあるから嫌がらせしても良かったけど、助けられたこともあるからそんなことしないよ」
居なくなった相手に何いってるんだろう、と自分で笑って、
まだ鳴り続ける端末に応答した。