第11章 出港★
「……」
視線、落とす。
乾いた甲板。
——最初からだ。
あの港で会った時。
「……あの時からか」
軽く声かけて、
軽く終わるはずだった。
いつもみたいに。
でも——
そうならなかった。
目が、離れなかった。
距離も、
簡単に詰められたのに。
やらなかった。
「……やれなかった、か」
小さく訂正する。
軽く触って、
終われる相手じゃねぇって
あの時点で、分かってた。
だから
踏み込まなかった。
距離だけ残して、
ずっと——
「……我慢してたくせに」
苦く笑う。
触れなかった分だけ、
消えなかった分だけ、
積もってた。
「タチ悪ぃな、ほんと」
低く。
分かってたのに、
線、越えた。
壊したくなかったはずの相手を、
自分で壊しかけてる。
「……結局これかよ」
吐き出す。
夜風が抜ける。
頭は冷えてるのに、
奥はまだ熱い。
視線が、また船内へ向く。
最初から、
こうなるかもしれないって
どこかで、分かってた。
「……それでも、か」
小さく落ちる声。