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まだここにいる【ワンピース サンジ】

第15章 冬島


さらに奥へ進むほど、人の数は確かにいるのに、会話の気配だけが消えていく。

すれ違っても、誰も立ち止まらない。

視線が合っても、すぐに外れる。



ルフィが眉をひそめる。

「なんかヘンだな」




ウソップがすぐ後ろでうなずく。

「ヘンっていうか……気味悪ぃだろこれ」



チョッパーは黙ったまま辺りを見ている。



サンジがゆっくり煙を吐く。

「会話が成立してねェ」

ぽつりと落とした声に、わずかに鋭さが混じる。



みかが周囲を見回す。

「話しかけても、返事がないね」



自分の声だけが、やけに浮いている。



そのとき、すぐ横を女性が通り過ぎた。



ルフィが声をかける。

「なぁ!」


一瞬だけ止まる。



でも次の瞬間には、何事もなかったように歩き出す。



サンジの目が細くなる。

「……反応はしてる」

「でも、返してねェ」



雪の音だけが、やけにはっきり響く。



町の中にいるのに、そこだけ切り取られたみたいな静けさ。


少し歩いた先に、小さなレストランの看板が見える。


扉の前には人の気配。

中にも灯りがついている。



ルフィが迷いなく扉を開ける。

「飯くれ!!」


声が店の中に落ちる。



店員は一瞬だけルフィを見る。



すぐに視線を落とす。

作業を続けたまま、何も言わない。


ウソップが後ろから続く。

「すみません!ご飯を……」


返事はない。


チョッパーが不安そうに小さく声を出す。

「ねぇ……?」



それでも誰も振り向かない。



サンジがカウンターへ歩み寄る。

「注文だって言ってんだろ」



低い声。



それでも店員は手を止めない。



サンジの眉がわずかに動く。

「……マジかよ」



ルフィが机を叩く。

「飯だって!!」


音は響く。


でも空気は変わらない。



誰も“聞いていないみたい”だった。



店の中だけが、外と同じ静けさのまま流れていた。
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