第13章 12★
夜の船内は、驚くほど静かだった。
さっきまでの喧騒が嘘みたいに消えて、波の音だけが低く揺れている。
サンジはしばらく横になったまま、動かなかった。
隣で眠るみかの寝息が、一定のリズムで聞こえる。
それだけで、胸の奥の熱が少しずつ落ち着いていく。
乱れた髪を、指先でそっと払う
起こさないように、ほんの少しだけ
そのときだった
「……サンジ……」
小さく、掠れた声。
寝ぼけたままの呼びかけに、サンジの動きが一瞬止まる。
「起きてんのか?」
返してみても、返事はない。
ただ、みかは無意識みたいに少しだけ身じろぎして、サンジの服の裾を指先で軽く掴んだ。
離さないというより、安心を探してるみたいな力。
サンジは小さく息を吐く。
「……寝てろよ」
そう言いながらも、その手をそっと外さない。
代わりに、指先をゆるく握り返す。
しばらくして、みかの呼吸はまた穏やかに戻っていく。
サンジはそのまま、もう一度だけ小さく呟いた。
「……おやすみ」
今度は、ちゃんと届くように。