第2章 Lesson1 ただ、撫でるだけ。
レイが顔を真っ赤にして怒鳴ると、傍にいたメイド達がくすくすと笑った。
最近のドラコは本当にどうかしている。長年の想いを募らせ過ぎて壊れてしまったのか、何かあるごとにこうしてスキンシップを求めてくる。
しかも何が嫌かと言うと、嫌じゃない自分が居るのが嫌だった。
レイがドラコからのセクシャルハラスメントに耐えていると、明け放した窓から一羽のカラスが入って来た。どうやら使い魔であるネサラが手紙を運んできたようだ。
急いで手紙を受け取ると、そこには短く『ティータイムの挨拶を忘れずに』とだけ書かれていた。
「誰からの手紙だい?」
「ハーマイオニーから。復学の件について話したいって」
先に言ってしまうと真っ赤なウソだったが、そう答えなければならない理由があった。今後の人生のためにも、この手紙の内容だけは何が何でも洩らしてはならなかった、
「復学の件と言うのなら、僕が手紙を見ても問題ないな?」
「お前はプライバシーって言葉を知らないのか?」
「ほら来た」とばかりにレイは短くため息交じりになじった。全く、隙もクソもあったものじゃない。レイは「着替えるから出て行け」と言って、メイド共々ドラコを部屋から追い出した。
時刻は間もなく午後三時になる。ようやく部屋の中が静かになると、レイはその紅い唇をニヤッと歪ませた。
――手配は此処までは完璧、あとはタイミングだけだ。
レイが素早く着替えを終えて部屋を出ると、出入り口のすぐそばにドラコが待っていた。本当に他にやることが無いのかと問いただしたくなる。
「やっと支度が終わったのか。それで?今日の予定は?」
「まずおじ様にご挨拶する」
「父上に?何で今さら?」
「まあ、黙って見てろ」
一応マルフォイ家の現当主はドラコなのだが、実務的なことは殆どルシウスが行っていた。
本来なら色々と仕事を覚えさせなければならないのだが、戦後の混乱の中そんな余裕は無く、跡取りの教育もままならない状態だった。
そんなルシウスを気の毒に思いながら、レイは居間に向かった。が、そこにルシウスは居なかった。
もしかすると、と思ったレイはサルーンと呼ばれる玄関ホールに向かった。すると――居た。暖炉の前で、何やら執事と話し合うルシウスを見つけた。