第2章 Lesson1 ただ、撫でるだけ。
「おじ様、お早う御座います」
「やあレイ。ゆっくり眠れたかね?」
「はい、お陰様で」
「それは良かった」
ルシウスの顔色が少し悪い事に、レイは一瞬で気づいた。それだけじゃない、執事との会話もレイやドラコに聞こえない様に小さくヒソヒソと交わしている。また何か厄介ごとを抱えている様だ。
これ以上問題を増やすことに罪悪感を覚えながらも、レイは自分の為にトリガーを引くしかなかった。
「おじ様、実はお話があるんですが」
「何かね?悪いがこれから外出の予定があって……」
「では手短に。実は私……この家を出て行こうと思っているんです!」
――バァンッ!!
大きな柱時計が三時を迎えるのと同時に、突如爆発音が響き、屋敷中の人間が悲鳴を上げた。
何者かの襲撃かと人々がどよめき、警戒態勢を取る中、破壊された扉の向こう側に、シリウス・ブラックが堂々と、かつ大胆不敵に笑いながら立っていた。
「いやあ、すまない。先にノックをするべきだったかな?」
堂々と扉を“破って”入ってきたシリウスに、マルフォイ邸の空気が一瞬で崩壊する。半面、レイはシリウスの登場に思わず満面の笑みでその名を叫んだ。
「シリウス!!」
「貴様ッ……ブラック!!」
レイとは正反対に、ルシウスの声が低く落ちる。そう、レイが密かに企てていた計画とは、このことだったのだ。
マルフォイ家での軟禁生活に嫌気がさしたレイが、密かにネサラを使ってシリウスと連絡を取っていたのだった。まあ、思っていた以上の派手な登場ではあったが、結果オーライだ。
「久しぶりだなルシウス、相変わらず吐き気がするほど趣味の良い家だな」
「帰れ、でなければ今すぐ警察を呼ぶぞ!」
「言われずともすぐに帰るさ、もちろんレイを連れてだがな」
シリウスは積みあがった瓦礫の上をずかずかと乗り超えると、ギュッとレイの手をつかんだ。
「君を迎えに来た。ハリーも君を待っている、これからは仲良く3人で暮らそう」
「ほざくなブラック!レイは我が家の許嫁だ!!」
「貴様こそ、許嫁とほざきたいならクラウスの墓前に花を添えてからにしろ!」
「――ッ!!」