第1章 彼女の計画、彼の差別化。+
「……拓人、もしかして、寝れなかった?」
「っ……!! うるさい、……寝たわ。爆睡」
嘘だ。
目の下の僅かなクマと、自分と目を合わせようとしないその態度が、何よりも饒舌に彼の「敗北」を物語っている。
うさみは、自分の服(=彼の私物)の袖を少しだけ握り、屈んで彼と目線を合わせる。
その距離が近づくたびに、彼のスウェットから「二人の混ざった匂い」が立ち上がり、拓人の理性をまた少しずつ削っていく。
「……お姉さんに、意地悪されすぎちゃった?」
悪戯っぽく笑ううさみに、拓人はついに観念したように、毛布を頭まで引き被った。
「…………ああ、そうだよ。……お前のせいで、一睡もしてねーよ。……満足かよ」
毛布の中から聞こえる、こもった声。
強がりも、独占欲も、全部昨夜の熱の中に溶けてしまった。
今の彼は、ただただ、大好きな女性に翻弄されたことを認めざるを得ない、一人の可愛い「年下の恋人」だった。
完全降伏。
朝の光の中で、彼はついに素直になった。
毛布にくるまって亀のように縮こまっている拓人に、うさみはそっと体重を預けるようにして、毛布越しにその大きな背中を抱きしめた。
「……っ、ちょ……重いって……」
こもった声で抗議してくるけれど、退かそうとする力は全く入っていない。むしろ、うさみの体温を感じて、毛布の中の身体がびくんと強張るのが伝わってくる。
うさみは彼の背中に頬を寄せ、昨夜から今朝にかけての、愛おしすぎる彼の姿を思い返しながら、耳元で優しく囁いた。
「……いろんな表情見れて、嬉しかったなぁ。……拓人のこと、もっと好きになった」
その瞬間、毛布の塊がピタリと動きを止めた。
数秒の沈黙のあと、のそりと毛布が捲り上げられ、中から髪をぐしゃぐしゃにした拓人が顔を出す。
「…………」