【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第5章 3
二人はしばらくそのまま動かなかった。リビングの床の上、冷めかけたココアと保冷剤がテーブルに置き去りにされている。窓の外では夏の夜が深まっていく。
爆豪がぽつりと。
「肩、明日絶対病院な。」
「はい。」
背中に回された透の腕に、爆豪は手を重ねる。ぎゅ、と握るでもなく包むでもなく——ただ触れている。
爆豪の腕の中にいると、透は理由もなく安心してしまう。自分を受け入れてもらえている気がするのに、なぜここまで気にかけてくるのか分からない。
セフレなら、嫌になれば切ればいいだけのはずなのに――やっぱり、爆豪くんは不思議だ。
深夜0時を回った頃、ようやく二人は床から立ち上がった。歯を磨き、着替える。ベッドに入ると、自然といつもの配置になった。爆豪が腕枕、透がその胸元に収まる形。
暗闇の中、天井を見ながら。
「寝れなかったら言え。」
それだけ言って、目を閉じた。
「…本当にシなくていいの?」
暗闘の中、深い溜息。
「しねぇっつってんだろ。今日は寝ろ。」
ぽん、ぽん。背中を叩くリズムは不器用だが、どこか子守唄じみている。
透は安心して眠りにつく。
(優しくて温かい…)
数分もしないうちに透の呼吸が穏やかになった。深く、規則正しい眠り。ここ数週間で一番深い睡眠だろう。
腕の中の透が完全に寝落ちたのを確認してから、そっと視線を落とす。暗がりの中でも分かる、頬のこけ。首筋の細さ。
(……クソ)
唇が音もなく動いた。「守りたい」——その言葉が宙に溶ける。
透の身体を少しだけ強く抱き寄せて、爆豪も目を閉じた。