【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第4章 0.5
ホテルのドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
透の足音が遠ざかっていく気配が、完全に消えるまで、爆豪はその場から動けなかった。
「……クソ。」
吐き捨てるように呟いて、乱暴に髪をかき上げる。
言えたはずだった。昨夜でも、今朝でも。
何度もタイミングはあったのに——結局、一言も出てこなかった。
頭の中に、さっきの透の声が何度も蘇る。
“割り切ったほうが楽じゃない?”
軽い調子で、何でもないことみたいに。
舌打ちが、自然とこぼれる。
「……んなわけ、あるかよ。」
低く、誰に向けるでもなく吐き出す。
ベッドに視線を落とすと、まだ残っている体温が妙に現実味を帯びていて、余計に苛立ちが増した。
踏み込めばよかった。
あのとき、止めればよかった。
“違う”って、一言言えばよかっただけなのに。
「……は、ダッセェ」
自嘲気味に笑う。結局、自分で選んだ形だ。
“好きにしろ”なんて投げた時点で、もう引き返せない。
拳を強く握る。
それでも、頭のどこかで分かっていた。
——このままで終わるつもりなんて、最初からねぇ。
静まり返った部屋に、一人分の呼吸だけが残る。
さっきまで確かにそこにあったものが、もう手の届かない場所にあるみたいで。
爆豪はもう一度、小さく舌打ちをした。