【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第4章 0.5
夜の街に出ると、カラオケの室内にこもっていた熱気が嘘のように空気が冷たかった。十一月の風が二人の間を通り抜ける。
前を向いたまま一呼吸。
「……で。どこだよ。」
透の手首を掴んでいた爆豪の手がするりと離れる。
手首に残った熱が夜風にさらわれて消える。爆豪自身も無意識だったのだろう、掴んだことにすら気付いていなかったような顔で前を歩いていた——が、耳がうっすらと赤い。
「……さっさと案内しろ。道わかんねえだろうが。」
透が示した先には、路地裏の小さなバーがあった。看板も控えめで、知る人ぞ知るといった佇まい。ドアの小窓から琥珀色の照明がぼんやりと漏れている。
看板を見上げ、それから透に目を戻す。
「 ……こんな店知ってんのか、お前。」
「一人で飲む時、たまに来るの。」
透が重い木製のドアを押し開けると、カウンター八席だけの狭い空間が広がっていた。
ジャズともラウンジともつかない静かなBGM、グラスを磨くバーテンダーの手元。客は奥に一人だけ。落ち着いた空気が、表通りの喧騒とはまるで別世界だった。
バーテンダーが「いらっしゃいませ」と低く落ち着いた声で迎えた。常連の顔を認めた柔らかい会釈。カウンターの奥では丸氷がグラスの中でカランと鳴った。
店内をぐるりと見回す。
「……悪かねえ。」
スーツ姿の爆豪と、落ち着いたバーの空気が不思議と噛み合っていた。
カウンターの真ん中に座り、メニューも見ずにバーテンダーに指を立てた。慣れた仕草だった。
「ジントニック。濃いめで。」
それから透の方をちらっと見て。
「お前は?」
「同じの、ください。」