【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第3章 0
透は口の中に残ったサラダを飲み込み、皿を置く。
「うん、ありがたいことに最近ぼちぼち忙しくなってきたよ。
てゆうか、轟くん、うちの事務所に合同パトロールの申請?してくれてたよね?」
透は思い出したように言う。
ローストビーフを咀嚼する動きが一瞬止まった。それから飲み込んで、静かに答える。
「……ああ。した。」
それだけ言って、轟はグラスの水をひと口飲んだ。
何でもないことのように振る舞っているが、依頼がいつでも入り込むような大手事務所の轟が、わざわざ他事務所に合同パトロールを申請するのは、よほどの理由がなければやらない。
空気を読んだのか読めなかったのか、緑谷が首を傾げて二人を交互に見る。
「え、そうなの?二人が一緒に?」
「……水辺の事故対応で連携できると思っただけだ。」
「だけ」と言い切る轟の耳の先がほんのかすかに赤いことに、緑谷は鈍感なので気付かなかったが——少し離れた場所からこちらを眺めていた爆豪の目は、それを見逃さなかっただろう。
舌打ちひとつ。誰にも聞こえない音量で吐き捨てて、グラス片手に会場の外へ出ていった。
「ん、多分受けると思うから、今度よろしくね。」
透は轟に微笑む。
その笑顔を見て、ローストビーフのフォークを持つ手が微かに緊張した。
「……ああ。こちらこそ。」
轟はそれだけ言って視線を逸らし、皿の肉をもう一切れ口に運んだ。咀嚼の回数が心なしか増えている。
「あ、僕そろそろオールマイトのところに顔出してくるよ!お二人ともまた後で!」
緑谷が小走りに去り、二人きりになった。会場の喧噪がその沈黙を埋めている。
フォークを置いて、ふと透を見る。
「……その服。」
言いかけて、止まった。「似合ってる」という単語が喉元まで迫っていて。