【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第7章 5
B組の資料にも、学生時代の訓練記録にも、透が「血」を操るなどという記載はどこにもなかった。水がなければ己を削り、その「生」を武器に変えて敵を捻り潰す。それはヒーローとして正当な行為だとしても、あまりにも代償が大きすぎる異能だった。
「……あいつ、あんなもん隠して、一人でヘラヘラ笑ってやがったのか。」
「ああ。俺も知らなかった。……お前の前では、そうありたかったんだろう。」
轟は視線を窓の外へ向けた。
透がかつて自分を突き放した理由、そして爆豪との歪な関係を選んだ理由。その断片が、あの血の海の中で見えた気がした。彼女は自分の内に潜む「壊れた部分」を、誰よりも恐れていたのだろう。
「……意味が分かんねえ。あんな姿見せられて、今更引くと思ってんのか。俺を誰だと思ってやがる。」
「お前がどう思うかじゃない。あいつ自身が、自分をどう定義しているかの問題だ。……爆豪、あいつは今、自分を一番許せていない。お前に嫌われたと、心底思い込んでいるはずだ。」
轟のオッドアイが、爆豪を真っ直ぐに射抜く。
「爆豪。お前、あいつが目覚めたらどうするつもりだ。」
「あ? んなもん、決まってんだろ。元通りだわ。」
「……あの姿を見てもか。」
轟の問いに、爆豪は顔を上げた。
その瞳には、恐怖も嫌悪もなかった。ただ、一人の女を失うわけにはいかないという、剥き出しの執着だけが宿っている。
その瞳を見て、轟はフッと息を吐いた。
「逃がすなよ。お前がその隣を譲る気がないなら、今度こそ、お前の口から本当のことを言え。嘘をつかせたままにするな。……お前が踏み出さない限り、あいつの時は止まったままだ。」
「……分かってるわ。」
爆豪がそう答えた時だった。