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【H×H イルミ 】黒と白のアリア 

第10章 霧の屋敷の裏側


それからは、すぐに自室に戻った。

ぐったりとして体が重い。
帳簿は諦めることにした。
足掻いたところで、分からなくなったものはもう分からない。正直にツボネに話し、また教えてもらおう。
頭がくらくらするし、気持ちもひどく消耗していた。


着替えを済ませると、幾分かさっぱりした。
だが、重たい身体は休みたがっているのに、まだ神経が騒ついている。
ベットの端に身体を横たわらせたニナは、大きく息を吐いた。

一見、常に冷静で合理的に見えるイルミが時折放つ"強烈な衝動"をニナは警戒していた。
幼い頃、実家裏の路地でゴミを片付けていた時、不意に真っ黒な野良猫に腕を引っ掻かれたことがある。
あの時の、光るような眼だけは今でも妙に覚えていた。

善意も悪意もなく、ただ己の欲にのみ忠実。
しかも、それを躊躇なく実行するのだからまるで飢えた野生動物のよう。しかも厄介なことに、イルミ本人にはその自覚が薄いように見える。

家のため。
芸術のため。
才能のため。

イルミの欲望は高尚な理屈で包まれて剥き出しになる事は決してない。正当化された合理に反論する余地はいつも与えられない。
イルミの洗練された知性に、ニナは太刀打ちできる気がしない。
事なきを得たことにニナはほっとして胸を撫で下ろす。

「……ただ、お腹が空いてだだけで良かった」

ニナの重たい身体と意識は白いシーツに沈んでいった。
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