ヒロインを降りたら、君がいた 【ヒロアカ 爆豪(緑谷)】
第1章 君の隣には彼女が相応しいから…
あの夜、車の中で告白されてからというもの、私の頭の中は勝己のことでいっぱいだった。
前世の私は、間違いなく彼を「最推し」として崇めていた。
画面の向こうの彼はプライドが高くて、でも誰よりも勝利に執着してNo.1ヒーローを目指す姿が格好良かった。
けれど、リアルに接してみればどうだ。
(……口は悪いし、すぐ怒るし、声はデカいし……。そもそも、小さい頃あんなに意地悪されたんだよ?)
正直、彼氏にするにはハードルが高すぎる。
推しと結婚したいなんてオタクの常套句だけど、実際にあの爆豪勝己に「俺だけ見てろ」なんて言われて、正気でいられるはずがなかった。
そんな悶々とした日々を過ごしていた数日後。
仕事帰りに偶然上鳴と響香に遭遇し、そのまま「一杯行こうよ」と誘われ居酒屋の暖簾をくぐった。
お酒が入り少しだけ気が緩んだところで、私は核心を伏せつつもそれとなく勝己の名前を出してみた。
「あの……さ。勝己のことなんだけど」
「爆豪? あいつが何?……また、なんか吠えた?」
上鳴がジョッキを片手に笑う。
私は言葉を選びながら慎重に続けた。
「……なんか最近、変っていうか。あいつ、私のことどう思ってるのかなって……」
すると、それまでこちらを観察しながら串を口に運んでいた響香がピタリと手を止め、呆れたような溜め息をついた。
「……はぁ。やっと、あのバカ告白したわけ?」
「えっ……!?」
予想外の反応に思わず声が裏返る。
隣で上鳴も「マジで!?」と身を乗り出してくる。
「ついに言ったかー! 長かったなー、あいつも。高校の時からずっとのことばっか目で追ってたくせにさ」
「ちょ、ちょっと待って……! 二人とも、知ってたの……?」
驚きのあまり固まる私を、響香がジト目で見つめる。
「知ってたも何も……。あんた以外、A組の連中全員気づいてたよ。爆豪がにだけ妙に当たりが強いのも、他の奴が近寄ると露骨に不機嫌になるのもさ」
「そうそう! 体育祭の時も、お前が緑谷の応援してた時、爆豪の周りの気温が3度くらい下がってたからね? 怖くて近寄れなかったんだから」
上鳴が茶化すように笑うけれど、私の心臓はバクバクと音を立てていた。