第4章 感情線の混線
「そう言う時こそ模擬戦でストレス発散すれば一石二鳥でしょ」
「なるほど。それは思いつかなかった」
それにスレてんのかと思えばとことん素直。その証拠にこの人の太刀筋は太刀川さんと良く似てる。なんなら熱くなる所までそっくりだ。性格が素直かは置いといて、言われた通りを忠実に再現できるって凄いことだと思う。
「ねぇ出水くん」
「はいはい」
「あたしがこんなんなったの、太刀川さんには内緒にしててね」
また怒られる、だらしねーなーとか文句垂れながら。口ではめんどくさそうにそう言ってるけど、地味に心配性な太刀川さんに迷惑かけたくないのがバレバレ。
「花衣さんが真っ青になって吐いたってのを内緒にしときゃいいんすか?」
「吐いてないでしょ、盛らないでよ」
「じょーだんですよ」
でも彼女は知らないんだ。
入隊式で涙腺緩くなって泣きそうになってたことも、熱出して寝込んだ時、連絡取れないって焦ってたことも。心配性が顔を出すのは花衣さん限定だってことも。
「よし、もうちょい頑張ってくる。出水くんありがとうね」
「あんま無理しないで下さいよ?」
太刀川さんもきっと知らないんだ。
彼女と話す時、自分がどんな表情をしてるのか。
不意に見せる男の顔も、目尻が下がって優しくなるそれも。
小さく手を振った花衣さんの後ろ姿を見送って、青春だな、なんてちょっと上から目線の思考を連れたまま、腹の中で鳴いてる虫を宥めるために、フロアを出て食堂へ向かった。