第3章 色づいて、舞い踊る
「太刀川さんが?人のこと鈍臭いだの、猿でもできるのになんでお前はできないんだだの、散々バカにしてたあの太刀川さんが?え、それほんとに?」
「嘘ついてどうするんですか~、ほんとほんと」
耳が腐ったのかと思った。それとも周りの騒音も混じって自分に都合よくそう聞こえたのかもって。
あれだけ言いたい放題だったくせに。なんなんだあの天邪鬼は。
人伝てなんかで聞くよりも、ちゃんと褒めてほしいし。あたしなんて単純なんだから、褒められたらますます調子に乗って頑張るし。そんなの、全然まったくこれっぽっちも嬉しくなんてないし。
「あー!花衣さんが笑った~!」
「え?」
「今笑いましたよね?初めて見たかも~!笑ってるほうが可愛いよ花衣さん」
「ええ!?」
「最初会った時、今だから言うけどめっちゃ怖かったもん」
表情ないしなんでこの人いっつも不機嫌なんだろって思ってたって。
自覚のある態度は人を不快な気分にさせる。それを知っていてあたしはずっと貫き通してきた。でも今、剥がれたのには気づかなかった、無意識だった。
どいつもこいつもホントなんなんだ。
嬉しくなるようなことばっか言わないで。
「あ、そうそう、今度女子会やるんですけど、花衣さんもおいでよ~」
「女子会?」
「うん、栞と月見さんと、あと加古さんにも声かける予定」
「うん、行く」
「ほんと?やった!それとその国近さんてなんかやだな」
「ん?」
「柚宇でいいよ~」
「じゃあ、柚宇ちゃんで」
「おっけー」
広がる輪。
繋がる縁。
無関係だと捨ててきたものが、少しづつ集まる感覚。どうしようもなくくすぐったくて、胸の奥があったかくて。さらりと人を巻き込んで、大丈夫だよと手を引いてくれる彼女の強さと優しさには感服する。あの癖の強い太刀川隊のメンツを纏め上げてるんだもの、そりゃそうか。
楽しいなぁ。
嬉しいなぁ。
久しくお目見えすることのなかった感情も、味わってみると悪くない。やっぱりこの人達と接するのは嫌いじゃないなと思った。