第3章 色づいて、舞い踊る
「国近さんも今から?」
「そうですよ~、花衣さんも?」
「あたしはもうちょっと後からの予定だったんだけど、太刀川さんが、ね」
「あ~、あの人の遊び相手か~、それは大変だ」
互いに見合って苦い笑いを乗せるぐらいだ、彼女も当たり前だけどちゃんと理解してる、あの男のことを。大変なのはお互い様だよね。
突っ込んだままだったポケットの中、カフェでもらったチョコがあと一つそこに隠れているのを国近さんに。ちょうど甘いの欲してたんです~って嬉しそうに受け取ってくれた。
「寒くなると不思議と食べたくなるよね、チョコ」
「あ、分かるそれ~。冬季限定とか書いてるととりあえず買っちゃいますもん」
「あたしも絶対釣られる」
「あの戦略にハマらない女子はいないですって」
だよね。そこにキャラメル味とか付け足されてた日には。
まとめて数個買ってしまう、それで失敗した経験もこの時ばかりはまんまと忘れて。
「あ、そうだ、こないだの入隊式の戦闘訓練、聞きましたよ~。すごいじゃないですか」
「え、あ、あー、うん。緊張して、あの後太刀川さんにめちゃくちゃからかわれたけどね」
「あの人、揚げ足取るの好きだからな~。子供と一緒ですよね」
ほんと嫌になるぐらい。なんだあの顔、から始まって、ロボットが歩いてるのかと思っただの眉間のシワしか見えなかっただの、最終的には歩く時、手と足が一緒に出るんじゃないかと思ったって。よっぽど酷かったのは認めるけど、大概失礼、失礼にも程がある。
嫌な記憶が思考の一番上に上がってきて思わず眉を寄せると、でもあの人のは照れも入ってますからね、チョコを口に運んだ彼女の意味深な発言に表情を伺えば、綺麗に口角が上がった。
「太刀川さん影で花衣さんのこと、俺の可愛い弟子は努力家だ、俺の可愛い弟子はそのうち上までのし上がってくる逸材だって、すっごい絶賛してるの、知ってました?」
「はい?」
「あんなんだけど、見る目は確かですからね~」
本部まであと僅かな距離。歩道の隣には渋滞寸前の車の群れ。その反対側の隣で国近さんはにこにこ嬉しそうに笑ってる。