第3章 色づいて、舞い踊る
「これ、よかったらどうぞ」
「あ、りがとう、ございます」
「見てたらすげぇ難しそうな顔してるし、あとここも」
「え、うそ」
「はは、疲れてる時って、甘いのほしくなるかなって」
個装されたチョコ2つ。あたしに渡したその大きな手が、そのまま自分の目の下を指して、隠れてませんよって顔しながら笑った。
久しぶりにコンシーラーまで使わされたのに、憎っくき隈め。なんで上手に潜んでくれないの。半ば諦め半分で最後のほうはもう、手の施しようがないと適当にした自分が恨めしい。
指摘されたことが恥ずかしくて、愛想笑いで誤魔化してみたけど、このあたしが上手く笑えるはずなんてなかった。
逃げるように入り口の扉を出ると冷たい風。
マフラーを唇まで持ち上げる指が、自分の手のひらに収まる茶色いキューブの存在に気づいて止まる。透明なフィルムをめくって口の中に放り込むと、それだけで顔が綻ぶ優秀なアイテムを最初に作ろうと思った人は、ほんと凄いと思う。
「あま、……うま」
さて、今日も今日とてズタボロにされに行きますか。今度こそマフラーを持ち上げて、既に冷たい指先はコートの両ポケットへ。遠くに見える馬鹿でかい建物へと足を進めた。
「花衣さーん!」
「……国近さん?」
「やーっぱり花衣さんだ~」
本部の最寄駅、降りて数分足らずでかけられた声に振り返ると、見知った顔。おんなじ電車だったんですね、笑顔で話す彼女は太刀川隊の紅一点。
こんな可愛い顔してんのに、プロも顔負けな生粋のゲーマーだと、出水くんから聞いた時は信じられなかった。太刀川さんと遊んでるのを見た時、そのコントローラーの手捌きを見て確信に変わったけど。