第2章 迷宮のダンジョン
「怒んなよ?」
「なに、………」
「うわあっつ。お前これインフルエンザじゃねーの」
「……病院行ってないから分かりません。1週間以内に太刀川さんがインフルエンザになったらそうかもしれませんね」
「判断基準おかしいだろ」
「ていうかなんなんですか、セクハラしたいなら他でやって下さい」
「だから怒んなよって最初に言っただろ」
びっくりした。一瞬息ができなかった。今までぼーっとしてた頭がいきなり冴えるみたいな感覚に戸惑った。だって、伸びてきた太刀川さんの手があたしの頬に触れるから。
いつもガサツで力任せなくせに、触れた指先が腫れ物を扱うみたいに優しかったから。
たったの数秒。心を読む時間も与えてもらえずに離れたのは、偶然か計算か。
はたまたあたしが正常に機能していないからか。触れられた片方だけがじんじんするのは熱のせいだけじゃなかった。
「なんか食うか?朝から食ってねーんだろ」
「肉」
「は?」
「肉が食べたいです、脂っこいやつ」
「弱ってる時にそんなもん食ったら吐くぞ」
「小さい頃から風邪引いた時は肉食べると治りが早いんですよ」
「それお前だけだろ」
あたしだけだろうが何だろうがそれで早くこの辛さから解放されるならなんでもいいの。久々すぎてけっこうキツいから早く治したいの。太刀川さんの買ってきてくれた色々も有り難く頂くけど。