第2章 迷宮のダンジョン
「おーい、望月いるかー?入るぞー」
え、え、えええ?
ちょっと待ってなんで?
追いつかない頭は痛さも邪魔して正常に動いてくれなくて、声の主が玄関を勝手に開けて勝手に上がり込んでくる、その一連の流れを馬鹿みたいに見てるだけだった。
「おー、いたいた、大丈夫か?」
「た、ちかわ、さん?なんで?」
「なんでってお前、全然連絡取れねーし、たまたま迅に会ったら冷えピタ貼って寝込んでるお前を俺が看てるのが視えるとか言うから。ってかお前ちゃんと鍵閉めとけよ、不用心すぎるぞ」
「あー、」
「つーか声すげーな。酒焼けのおっさんかよ」
あれ、あたし昨日鍵、そういえば閉めた記憶がない。帰ってきてポストの中身を確認したかったけど、荷物が多かったから家ん中に置いた後で取りに行こうと思って、そのまま忘れてた。
そこまで思い出して、途端に血の気が引いた。昨日の夜から今の今まで施錠もしてなかったとか、怖すぎて震える。
「いろいろ買ってきたけど、とりあえずコレ貼っとけ」
「いやです」
「はぁ?なんで」
「貼る瞬間のあのゾクゾクするのが嫌いだから」
「子供かよ。いいから貼っとけって」
「だから嫌ですってば」
わざわざコンビニにまで寄ってきてくれたんだろうか。大きめの袋からローテーブルに、出てくる出てくる風邪と言えばこれだろってやつ。しかも大量。
ゼリー状の栄養補給食とスポーツドリンク。レトルトのおかゆにプリンと桃缶。
その中で一際かさ張ってた長方形の箱型を開封した太刀川さんが、1枚取り出してあたしの目の前に差し出した。
語尾が荒くなったのはホントに嫌いだからで、布団を被り直して太刀川さんに背中を向けたのは単なる拗ねだ。
それにテンパって気づくのが遅れたけど、あたし今、見事にすっぴんだし、髪なんてきっとボサボサだし、スウェットだし。別にこの人の前で色気付こうなんて思ってないけど、気恥ずかしいのには変わりない。