第2章 迷宮のダンジョン
「そう言う君は?迅さんと友達なの?ていうか君もボーダー?強いの?ランクは?何位なの?」
「オレは、その、……迅さんに助けられ、て」
「て?なに?」
「ボーダーになったら、……また会える、かな、………って思って再来月入隊するんだよ!」
分かってる、分かってるよ、大人気ないのは。こんな子供にムキになって、それもすごいやらしい言い方をしてるのは自覚してる。大人の対応を取るべき場面なのは百も承知だ。
案の定、棘だらけの言葉に視線を泳がせ語尾も小さくなった目の前の男の子は、最後には開き直ったみたいに声を荒げた。あぁ、やらかした。今のあたしはいろんなものに対して余裕がなさすぎる。
「ごめん、今のはあたしが悪かった。色々いっぱいいっぱいで完全に八つ当たりしてた。ごめんね」
「なんだよ、それ」
「ううん、こっちの話し。……あ、ちょっと待ってて」
「え?」
「いいから、ちょっとここ座って待ってて」
隣の空席をぽんぽんと叩いてから立ち上がって背中を向けた。目指すは自販機一直線。好みは知らないからりんごジュースでいいや。出て来た冷たい缶を抱えてその子の隣に座り直す。
はい、膝の上に乗せてあげると訳分かってないみたいな表情がさっきよりもずっと子供っぽくて可愛い。
「仲直りしよう」
まだ釣られてくれるお年頃だといいけど。
強引に渡されたそれをじーっと凝視した後、おもむろにプルタブを引いて唇に付けてくれる所を見ると、成功?
便乗して飲み込んだカフェオレは味が変わるぐらい冷え切っていた。
「仕方ないからしてあげるよ、仲直り」
「うん、ありがとう」
「おねーさん、名前なんて言うの」
「あたしは花衣。望月花衣」
「花衣ちゃんか。俺は緑川駿、駿でいーよ」
仕方ないって。照れながら言われても強がりがまる見えだよ。
どことなく嬉しそうに名前を教えてくれた駿くんの表情に、なんか、もう、やさぐれそうになってた自分の気持ちがかなり軽くなった。
流されて決めたわけじゃない。でも硬い決意があったわけでもなかった。酷く曖昧であやふやな気持ちがあるから、いつまでたっても上達しないのかなって。
こんなんでホント大丈夫かなって。太刀川さんから教えを請うたび内心のへこみ具合も焦りも半端なかった。