第2章 迷宮のダンジョン
仕方ないよね。詰め詰めのスケジュールじゃ気も立つ。そう理解してても自分の負の感情は自分が思ってるより大きくてドロドロしてて。切り替えるのに苦労してたけど。
なんだ、そっか。あたしに今必要なのは癒しと睡眠だ。
そんな簡単な答えも見失うぐらい必死だったんだと思うとちょっと笑える。
今日帰ったらしし丸に癒してもらおう。それでいて12時間ほど寝倒してみよう。そうすればまたもと通り、元気になるはず。
「でね、でね、その時迅さんがさ、助けてくれたんだけどそれがもうめっちゃカッコよくて!!」
「駿くん、迅さんのこと大好きなんだね」
「逆にあの人のこと嫌う人なんていないでしょ!もしいたらそいつ人間じゃないよ!」
じゃああたしは人間じゃないし、めっちゃ嫌ってましたとは口が裂けても言えないな。
あんなにダダ漏れだったいけ好かない感情はどこ行ったんだってぐらい、話し込んでみると可愛くて可愛くて。目なんてきらっきらさせてたくさん喋ってくれる駿くんは、13歳の思春期真っ只中なお年頃だった。
「あ、やば、花衣ちゃんごめん、オレそろそろ行かなきゃ」
「うん、じゃあ、またね」
「入隊式で会えるの楽しみにしてるからね!」
すっと差し出された手のひら。にぃって笑って握手を求める可愛い男の子に、一瞬躊躇う。
大丈夫。言葉と腹の内が違うのは当然。あたしだって太刀川さんに心を読まれたら、ぼこぼこにされるどころじゃ済まないこと思ってるんだし。大丈夫だ。
掴んで握った駿くんのそれは、男の子のくせにスベスベであったかい。
「バイバイ」
ぶんぶんと手を振り満足げに走っていった後ろ姿は子犬みたいだなと思った。
りんごジュース美味かった。
喋ってみたら案外いいヤツじゃん。
「はは、なまいき」
言葉とは裏腹に緩む口元。周りに見られるのが嫌で、残りのカフェオレを飲んで誤魔化した。