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PRISM LINE【ワールドトリガー】

第1章 シークレットメロディ



同じ空間にいて、目と目が合ってるにも関わらず、あたしを見ていないような瞳を向けるんだ。

違和感のあるその目に気づいたら苦手意識が芽生えて、貼り付けたような笑顔も相俟えば大嫌いになっていた。


「……これ以上関わらないって約束してくれたら入れてあげてもいいですよ」
「分かった。いいよ、約束する」
「…………」
「そんな睨まないでよ、ほんとだって」


付け回され歴およそ数ヶ月。
何を言ったって逆に無言を貫いたって引いてもくれなかった人の言葉を、おいそれと信用するほうがどうかしてる。
それでもこんな所で足止めなんてくらってる暇はあたしにはない。早く帰ってレポートの続きをやらなきゃいけないの。

頭2つ分ほど高い迅さんの頭上に傘を傾け、さっさと歩いて下さい。そう言う前に中心のシャフト部分をひょいっと掬われた。


「あぁ、でも、」


歩幅は同じ。ゆっくりでもなく早くもない。
なにかを思い出したような素振りで遠くに視線を飛ばす横顔。口の端がゆるりと上がってとんだ策士だなと思った。


「おれからは関わらないけど、きっと花衣ちゃんから接触してくるよ。近いうちにね」


思い出したんじゃない。最初から口走るつもりだったんだ。


「それとスカウトされんのがイヤってことは、それ以外で会いに来るのはおっけー?」
「は?」
「お友達として?仲良くしようよ」
「しません!」


はは、手厳しいな。
笑って溢す迅さんにいらいらする。
言葉の攻防は今に始まったことじゃない、もうずっとだ。

素質があるだの才能があるだの向いてるだの、どこぞの古い常套句のようにずっと言われ続けてきた。
だけどボーダー以外のことを彼が言ってきたのは初めてで。それが無性にあたしを苛立たせる。


「花衣ちゃん」
「なんですか」
「ちょっとごめんね」
「…………なにやってるんですか」


不意に立ち止まった迅さんに顔を向けた。
彼も同じように体ごと向き直って、右手で持っていた傘を左手に持ち替える。

空いた手のひらがすっと伸びてきて冷たくなっているあたしの指を緩く掴む。


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