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PRISM LINE【ワールドトリガー】

第1章 シークレットメロディ



なのになんでまだこの人はあたしの目の前に姿を見せるんだろう。と、そこまで考えて致命的な誤算を思い出した。

意を決した抗議の場所が悪かったことを。ぐでんぐでん一歩手前の出来上がる寸前に相談したことを。

あの飲兵衛、きっと1ミリも覚えてないんだ。
酒の席で愚痴ったあたしもあたしだけど、酒が入らなきゃ愚痴なんて溢せない性分をこの機会に是非とも覚えて頂きたい。

何がそんなに楽しいのか、さっきから口角を上げてあたしを見下ろす迅さんにも分かるよう、あからさまに息を吐き出す。

そんな嫌そうな顔されると傷つくなぁ。ぬけぬけと口にする彼の顔を見れば分かる。そんなことこれっぽっちも思ってないのは。


「元からこういう顔です、……ていうかこんなとこで遊んでないで終わったんなら早く帰ったらどうです?」
「おれもそうしたいんだけど、これも仕事なんだよね」
「……そうですか、じゃあ頑張って下さい、さようなら」
「おいおい、他人事みたいに言わないでよ。花衣ちゃんにモロ関わることなのに」


ボーダーになる気はない?
初めましての数時間後に、この男はあたしの口をこれでもかってぐらいに開けさせた。

なんなら正気かコイツ?焼きでも回ったか?と言葉にはせずとも心中で馬鹿にしたような気もする、今思えば。

ボーダーになる気はない?
なる気どころか興味のきの字も頭の中にはなかった。
だって19年間生きてきて何の見返りもなく誰かを守りたいとか、何かの役に立ちたいとか、そんな大それた事を思った覚えがない。

逆を返せばそう思えない環境だったってことで、つまりは刺激も波乱もない平凡な幸せの中で生活できていたんだってことだと思う。

普段滅多と話題に上がらない話しをふと太刀川さんに聞いたことがあった。ボーダー隊員ってどんな集団なのか。
どういう人が所属して、どういう人がこの三門市を守ってくれてるのか。

ざっくり教えられたのは、好奇心、正義感、あるいは犠牲者。だいたいは、そのどれかに分類されるらしい。

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