第1章 シークレットメロディ
「えっと、もっかい聞きますけど、迅さんもそのサイドエフェクト持ってて、未来予知ができるってことでしたっけ」
「そーそー」
「てことはあたしの行動もサイドエフェクトを持ってるってことも、何もかも分かってたってことですよね」
「まぁ、そうなるよね」
「あの雨の日に手を握ったのって、」
「うん、読み取れるんだろうなと思って試したんだけど、花衣ちゃん手強いからちょっと焦った」
脳裏に、あの雨の日の光景が鮮明に蘇る。
傘のシャフトを伝って、迅さんの指先があたしの手に触れた、あの一瞬。
ほんとは聞こえてるんでしょ?
脳内に直接、心拍を狂わせるような声が滑り込んできた。
確信に満ちた、あまりにも強かな思考の塊。
驚きで心臓が跳ねて、指先が震えそうになった。
でも、ここで隙を見せれば、この人の思う壺だ。
あたしは喉元までせり上がった動揺を、必死に飲み込んで聞こえないふりをした。無表情で彼を睨みつけ、最悪の印象を上書きしてやったんだ。
あの時のあたしの必死の抵抗さえ、この男は手強いと笑って見ていたなんて。それもしれっと。さらっと。当然のように。
全部お見通しだった。あたしが頑なに拒否っていたここ数ヶ月も、その間のやり取りも全てこの男の手中にあったってこと。
太刀川さんに白状した形で相談したのも、こんなとこまで、腰が抜けたとは言え、ぬけぬけと自分から着いてきたのも全部。
そうとは一切知らずに、いけしゃあしゃあと文句を垂れてたあたしって、一体なんだったんだ。こんなのプライバシーもへったくれもないじゃないの。