第1章 シークレットメロディ
「それを踏まえた上で聞きますけど、あたしがボーダーになる未来は視えてるんですか?」
「視えてるよ。それもはっきりとね」
首を縦に振らなければいい?違う。
横に振った所で手遅れだ。そう気づいたことすらも。
あれこれ考えていた自分が馬鹿みたいに思えてきた。
「で、なんでそこまで入れたがるんですか?」
そしてもう一つ。ボーダーとは。サイドエフェクトとは。自分の強みまで開示して、あたしのそれもご丁寧に説明までしておいてそれで終わり、なわけないのは分かってる。
たぶん、きっと、ここからが本題だ。ここから先を確実なものにしたくて色んな手を駆使したんだろう彼の顔つきが一瞬だけ変わった。
壁に掛かった時計は深夜1時。カチカチとやけに大きく聞こえるのは、あたしら以外の人の気配が全てはけたから。
息をすることさえ躊躇ってしまうような、ぴんと張り詰めた雰囲気が、なんでか速さを増す自分の胸の音が、これから紡がれるだろう事の重大さを表しているようだった。
「花衣ちゃんがこっち側に来てくれないと出会えない人物がいるんだよ」
「なんですかそれ」
「ごめん、まだ詳しくは言えないからそこは察して」
「一般人のままじゃダメってこと?」
「そう、ボーダーにならなきゃ出会えないのは確実」
「それで?その人物とあたしが会ったとして、そっちのメリットはなんなんですか?」
ぶっちゃけ、話の半分も理解できていない。残りの半分だって、信じたわけじゃない。けれど、否定もできなかった。そんなの理由はひとつだ。
人の本音を読む力。それに振り回されて、長年苦しんだ自分がいるからこそ。
だからこそ、普通の神経の持ち主なら相手もしないような話しに、少しでも耳を傾けようかなと思えた。
「花衣ちゃんが入ったら三門市民は安全、てとこかな」
「入らなかったら?」
「近い未来で人口の約3割が死ぬ」
こんなのもう、あたしにはイエスの一択しかないじゃないか。